自律神経の乱れとはどんな症状?
自律神経というのは、医学的には交感神経と副交感神経を併せたものを指します。これはいずれも自分の意志で制御できません。自律神経は内臓に広く分布していることが知られており、これがバランスよく働くおかげで、心臓は必要に応じて脈を早めたり、ゆっくりにしたりすることができます。このため、「‘断固たる意志をもってしても、心臓を止める」ということは不可能なのです。つまり自律神経は、【身体に活動を促す】交感神経と【休息を促す】副交感神経が上手くバランスを取ることで全身の器官をコントロールし、身体が必要な時に必要な分頑張れるように、一方で無理をしすぎて器官の障害を起こさないように、と働いているのです。
こうした自律神経が乱れると、緊張感が高まり、吐き気や多汗(汗をかきやすくなる)、頭痛、肩こりがひどくなる、動悸、手足が痺れる、不整脈、めまい、眠れない・目が覚めやすい(不眠)、不安になるなど様々な症状が見られるようになります。また、精神的な症状だけでなく、胃酸の過剰な分泌も見られるようになり、胸焼けや胃の痛み(胃痛)、腹痛、便秘、下痢と過敏性腸症候群といった消化器症状を引き起こすこともあります。こうした一連の状況を指して、自律神経が乱れていると考えていきます。
自律神経を整えるにはどうすればいいの?
自律神経を整えるために、生活リズム、食生活、運動、ストレスを溜めない(上手く発散する)、自分をよく知ること、この5つを意識することが推奨されています。
生活リズム
自律神経は、身体に活動を促す交感神経と休息を促す副交感神経が上手くバランスを取ることで全身の器官をコントロールしています。しかし、睡眠不足や昼夜逆転の生活、偏食など、生活リズムが崩れてしまうと、もともと人が持っているものより、交感神経が優位になる時間が長くなってしまいバランスを崩してしまいます。これは、夜遅くまでスマホなどでブルーライトを浴び続けることでも同じです。脳も身体も働く時間と休息の時間、それぞれをしっかり取ることを意識して見ましょう。
食生活
生活リズムと重複する点もありますが、偏食や過食は自律神経の乱れを引き起こしてしまいます。そのため、1日3食、できるだけ同じ時間帯を意識して、栄養バランスの取れた食事をすることを推奨します。ここでは、自律神経を整えるため、特に推奨される食品を紹介していきます。参考にしてみてください。
ビタミンB群
魚介類や卵、海苔、レバー、赤み肉に含まれるビタミンB12は、自律神経の主成分とされています。また、ほうれん草や落花生、豚肉に含まれるビタミンB1は、脳の糖質代謝を促進する効果が期待されています。そのため、ビタミンB群を意識的に食事から摂取することは良いとされています。
ビタミンC
パプリカやレモン、ブロッコリーに多く含まれるビタミンCは、ビタミンEの効果を引き立たせるとされています。そのため、ビタミンEとともに、食事の大切な要素として、積極的に摂取していきましょう。
ビタミンE
マグロやウナギ、ナッツ類、カボチャに多く含まれるビタミンEは、抗酸化物質と呼ばれています。抗酸化物質は、交感神経が優位な状態が続く時に体内に蓄積される活性酸素を還元することで副交感神経優位となることを手助けするとされています。
トリプトファン
乳製品、大豆製品、バナナ、雑穀、鶏むね肉などに多く含まれるトリプトファンは、気持ちをリラックスさせる効果が期待されています。脳内の神経伝達物質のひとつであり、ストレスを抑制される効果のあるセロトニンの材料になるとされています。トリプトファンは、体内で作ることができず、食事から補うことしかできません。特に食事バランスが乱れている場合などは、普段の食事からトリプトファンが摂取できているか、検討してみてもよいでしょう。
カルシウム
切り干し大根、小松菜、豆腐、乳製品、小魚に多く含まれるカルシウムには、交感神経を抑制する効果があるとされています。また、自律神経が乱れると生じる症状のひとつである不安な気持ちやイライラといった症状を軽減させることも期待されています。
軽い運動
自律神経の乱れを整えるためには、激しい運動ではなく、ウォーキングやヨガ、ストレッチといった無理なく続けられる軽い運動を日常生活の中に取り入れることが大切です。また、腹式呼吸や深呼吸なども効果が期待されています。交感神経を休め、副交感神経を活発にできるかが重要になります。できる範囲で少しずつ始めてみましょう。
ストレスを溜めない(上手く発散する)
自律神経の乱れを起こさないために、ストレスを溜めないことは理想ですが仕事や育児、家事など生きている限り、何もストレスを抱えないといったことは難しいのが現状です。そのため、私たちはストレスとどのように向き合い、上手く発散するか、より賢く捉えられた方が楽に生活することができるでしょう。自律神経を整えるため、ストレスを溜めない(上手く発散する)ためには、一人ひとりにあった行動があるでしょう。代表的なものとして、読書、音楽がありますが、人によってはアロマなどもよいとされます。運動と同様ですが、副交感神経を活発(優位)にできるかが重要になります。
自分をよく知る
自律神経を整えるためには、日頃からちょっとしたことを自分で意識することも大切です。意識するために日記などで身体の不調を記録すること、意識的に腹式呼吸を取り入れてみることなど、意識することで自分の状態を見つめ直すきっかけにもなるでしょう。
自律神経の乱れはどうやって診断(判断)するの?
自律神経の乱れを認める場合、自律神経失調症が疑われます。しかし、自律神経失調症はICD-10、DSM-5ともに正式な疾患名として認められておらず、患者さんの状態を伺い、同様な症状を呈する疾患を考えながら、診断をくだしていきます。
自律神経失調症とうつ病の違い
自律神経失調症(自律神経の乱れ)とうつ病には、眠れない、イライラする、倦怠感(疲れる)というように同じような症状が生じますが、うつ病と自律神経失調症は異なります。自律神経が関連した症状はうつ病でも見られることがあります。しかし、うつ病は、「うまくいかない」「もうだめだ…」といった悲観的な考えや、焦りなどが併存して見られたり、日常生活に集中できないといった状況から、長らくに塞ぎ込んでしまいます。自律神経に乱れのある場合は感情の起伏が大きくなりやすい傾向もあります。こうしたことから、専門家でも判断が難しいこともある状態です。しっかり専門家に相談し、いずれの場合でも適切な治療を受けるようにしましょう。
自律神経の乱れはどうしたら治りますか(治療方法)?
自律神経の乱れを認めた場合、症状や原因に応じて薬物療法や心理療法といった治療を行っていくことになります。また、生活リズムや食生活の改善が必要な場合には、生活改善もしていきます。