当院の検査について
血液検査の必要性
抗精神病薬をはじめとする薬物では、稀ながらも肝機能・腎機能障害やさらにきわめて稀ながらも横紋筋融解といった重篤な副作用を惹起する可能性があります。このため投与前と後の変化、もしくは投与後の推移を見守る必要があります。
また、他院で定期的な血液検査をしていない患者さんについては、高脂血症・高血糖などの生活習慣病の併発がないかなどのは血液検査をする場合があります。お薬の中には糖尿病の方に使用を避けることと明記されるものもあるため、これらが必要となります。
心電図検査の必要性
抗精神病薬ではその薬剤の種類によって、不整脈など異常波形の原因となることがあります。頻度は多くはなく、起こったとしても問題にならない不整脈であることがほとんどですが、これらが見られた場合、減薬や他の薬へ変更を要することもあります。これら安全に治療を開始・継続できるようにするために心電図検査を行います。
心理検査について
WAIS-Ⅳ(成人知能検査)
全検査IQに加え、「言語理解」、「知覚推理」、「ワーキングメモリー」、 「処理速度」の4つの群指数も測定でき、一層多面的な把握や解釈が可能です。
知能検査の目的は、知能指数(IQ)を測定することですが、その他にも測定する際の様々な検査の結果から、患者さんの得意な面、不得意な面について客観的に見ることができます。
これは、精神疾患全般の診断にも役に立ちますが、更に重要なのはこれから患者さんが生活していく上で、自分は何が得意で何が不得意であるかをわかることです。不得意なことが分かっていた場合、例えばお仕事などで事前の準備・対策を行いやすくすることが可能となります。また、転職を検討する際などにも参考となる場合が多く、特に学生時代で得意・不得意科目の差が大きかった、あるいは今までの生活の中で得意・不得意が大きい感覚があるという方には推奨される検査となります。
田中ビネー知能検査
元来は子どもの知的側面の発達状態を客観的に捉えるための検査です。知的発達のペースや水準(遅れているのか速いのか、その遅速の程度はどれくらいか)を簡便に把握することができます。また、課題への反応に加えて子どもの生活史や背景も考慮し、子どもが課題解決という目標にどのように向かっていくかを観察・精査します。
知的障害が考えられる方や発達系スペクトラムの状態把握などに用いられます。
ロールシャッハテスト(性格検査)
ロールシャッハテストとは、精神分析の中で用いられるテストです。インクの染みで作られた模様から、「何に見えたか」「どのように感じたか」などを質問します。
その回答によって、性格や精神状態、トラウマなどを測ります。
ロールシャッハテストは、病気や障害を的確に診断する検査法ではなく、どちらかと言えば性格診断などに近いものです。正解不正解があるテストでもありません。
AQ(自閉症スペクトラム指数)
成人用では自己評価、児童用では他者評価となっている患者さんの自閉症傾向を測定する検査で、高機能自閉症やアスペルガー障害を含む自閉症スペクトラム障害のスクリーニングに使用されます。
ASRS(ADHD注意欠如・多動性障害チェック)
パートAとパートBの2部構成になっているADHDの自己評価チェックリストであり、パートAは、自身でADHDの特性の有無を確認するために、パートBは、医師が患者さんのADHDの特性を確認するための内容となっています。
その患者さんがADHD特性を持つか参考にするため用いられます。
SDS(うつ性自己評価、欠損症候群診断基準)
SDSは、うつの程度を客観的に数値化することができます。主観的な心理検査なので、SDSの結果でうつ病が診断できるわけありません。しかし、症状の程度を推測することが可能で、治療前後に実施することで治療効果の判定にも生かすことができます。うつ病と診断された、または疑われる場合に症状の程度を測るために用いられます。