神経障害性疼痛
神経障害性疼痛とは
手や足、および顔面や体幹のしびれはわりとみられる症状になります。一方、しびれの中には感覚の鈍さや運動麻痺の脱力感があるケース、痛みがあるケース、手や足のつっぱりがあるケースもあります。中には、なんとも言葉では表現しづらい痛みの場合もあります。
そのため、状態を訴えても正しく認識してもらいづらい傾向にあります。原因も身体の箇所によって異なる場合が多いです。診断や治療に苦戦することが多い症状といわれています。神経障害性疼痛は、感覚神経の障害によって起こる慢性的な耐えることが辛い痛みです。脳卒中後の痛みや帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、外傷性脊髄損傷等もこれに当てはまります。
神経障害性疼痛の原因
痛みやしびれの原因は、神経障害性と非神経障害性に分類できます。感覚は、皮膚や関節、筋肉の感覚受容器から多くの情報が中枢神経系に伝わります。神経障害性の痛みやしびれの感覚は、この脳へ感覚を伝える経路のどこで支障が起こっても感じられることがあります。痛み刺激そのものの存在を感知する感覚受容器、この通り道である末梢の感覚神経や脊髄、こうした刺激を痛みとして感じとる処理をする大脳、どこの箇所で障害されても生じます。非神経障害性の痛みやしびれは、手や足の血流の循環が障害されたり、ビタミンや電解質異常の代謝や内分泌疾患、過換気症候群等に起因する疾患を含みます。痛みやしびれの診療では、丁寧な問診が必要不可欠です。
痛みやしびれの具体的な内容や分布、症状はどこから始まってどのように進んだか丁寧に詳しく問診します。丁寧に問診をしていくことで原因疾患を見つけられる可能性が高まります。
神経障害性疼痛の症状
由来のしびれの原因には、脳出血や脳梗塞等の脳血管障害があります。この場合は、突然現れた左右どちらか片側に症状がみられる場合が多いです。しびれに脱力をともなうこともありますが、しびれのみ現れることもあります。
脊椎に異常があって首や腰の神経を圧迫することで生じるしびれでは、圧迫されている神経に一致するしびれがみられたり、症状の移り変わりがあります。一方、手足の末梢神経の障害によるしびれでは、手足の末端にしびれや脱力等が強く現れます。1つの末梢神経にのみ症状が現れることもあれば、左右対称性で症状が現れる場合もあります。
神経障害性疼痛と鑑別すべき診断
脳にしびれの原因がある疾患では、最初に脳出血や脳梗塞等の脳血管障害を見分けることが重要です。脊髄にしびれの原因がある疾患では、帯状疱疹、脊椎炎、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、悪性腫瘍の脊椎転移等を見分ける必要があります。末梢神経障害では、撓骨神経麻痺等の締め付けに伴うものや手根管症候群、膠原病や血管炎等の炎症が関係するもの、ビタミン欠乏や糖尿病等の代謝性疾患に伴うもの、ギラン・バレー症候群等の免疫が関係するもの等が考えられます。糖尿病が原因のしびれでは、主に感覚障害がみられて運動障害は軽いものといわれています。
神経障害性疼痛の治療
神経障害性疼痛の治療は薬物治療を中心に行います。
用いられる薬剤は、病態の完全治癒を可能にするものは現在においては存在しませんので、痛みの軽減とともにADL(日常生活の動作)やQOL(生活の質)の改善を考慮し選択します。
ただし、段階的に実施する薬物療法が無効ないし又は効果不十分、また副作用などで投与継続が難しい場合には、痛み専門の他施設を紹介することもあります。
使用する薬物は痛みを感じる神経伝達物質の興奮を抑制したり、痛みを感じることが有意になっている神経伝達を正常なバランスに戻す薬剤を用います。
神経障害性疼痛の場合、一般的に消炎鎮痛剤は効果が低いため1ヶ月以上続く痛みがある場合は主治医に相談することをお勧めします。